皮膚温度測定について

皮膚の温度測定とは、リーディングという上部頸椎カイロプラクティックにおける最も代表的な検査です。全身の血管運動中枢は上部頸椎部位に位置する延髄にあり、上部頸椎変位による首のズレは、神経伝達妨害(サブラクセイション)を起こし、皮膚温度に温度低下をもたらします。

したがって頸部の両側の皮膚表面温度を測定することで、サブラクセイションの有無を判断する材料になるのです。上部頸椎部位にサブラクセイションが存在する時は、この部位の温度低下が認められ、その人特有の波形(パターン)を示します。

臨床での検査データ

上のグラフが示すように、サブラクセイションをアジャスト(6月20日)することにより、脳からの神経伝達妨害が改善されると温度が上昇し、次回の検査(8月22日)でも温度の低下が見られない場合は、自律神経の働きが正常に機能していることが分かり、このような場合は、ノ-アジャスト(アジャストせず)で様子を見ることになります(グラフの形に注目)。

再度、サブラクセイションが起こると、初回時(6月20日)の検査と同じもしくは類似した波形が示されます。これは主にアジャストを受けた第一頸椎もしくは第ニ頸椎が、その人の長年にわたる骨格系の構築上の問題や、固有の椎骨の形状によって同方向へのズレ(その人の骨の動きのクセ)を余儀なくされるために起こる現象です。

サブラクセイション・パターンが出ていない時は、脳からの神経伝達が円滑に行われているとの判断がつき、椎骨は脳によって筋肉を通して安定した位置に保持されているのが分かります。

温度に関して言及すれば、極度の自律神経失調症や不安症の方は、アジャスト後、一旦上部頸椎部位の温度が下がる現象が起こることもありますが、他の部位の温度の上昇や重心測定に改善が見られます。

何が体を調整しているのか

思い起して下さい。体は脳からの命令が神経を通ることで、自分の力で調整されているのです。神経伝達妨害(サブラクセイション)は、自律神経の支配を受ける内臓や器官にも影響をもたらします。首の状態が良いと云うことは、全身に良いと言えるのです。

何でも治るのか

しかし、それによってすぐに全てが良くなるということではありません。
どこから、どのように、いつ治るか、治らないかは、原因としての伝達妨害の放置期間、妨害の度合い、病巣(細胞・組織)の進行度合によって個人差がありますが、物質の限界(放置していても治癒する見込のない器質的問題・適応の限界)を超えたものに対しては外科的処置も必要となってきます。

物質の限界に関しては、アジャスト後、検査結果もよく、他の部分は改善されたにもかかわらず、ある部分(病院でも手術を勧められている部分)だけは、改善が見られない場合などの時が考えられます。温度測定は、頸部だけではなく、頸部と腰部または背骨全体を測定することがあります。これは上部頸椎のアジャスト後、頸部から下がどの程度改善されたかを確認するために行うものです。来院された時点でのあなたの身体の状況に合わせて行います。

日々進化する検査技術

下図は、首から腰までの表面温度を別の測定器で計測したものです。測定器には上図のようなグラフと数値で示すものなど色々な機種があります。測定機器も科学技術の進歩で、その精度も年々向上して来ています。

下図のデータは、当会員のオフィスでも導入されている測定器のものです。この測定器によるデータは上図で解説したグラフのみならず、患者さんに容易に理解出来るようにグラフをカラー分布、そしてバー表示に変換して提示出来るように3つの形式から構成されています。そして、このそれぞれの角度から患者さん特有のサブラクセイション(脳からの神経伝達妨害)パターンが詳細に割り出せるように配慮されています。

 

a図

a図のI、IIIは、上に示したグラフ(図)のように左右の温度差を波形で示したものでサブラクセイションの存在(パターン)を示しています。この波形(温度差)をカラー分布で示(変換)したのがb図で、温度差が大きいほど濃い色(緑→黄色→オレンジ色→赤色)で表示されます。

 

b図

a図をカラー分布に変換しますとこのように示されます。
赤色の部分は温度差が大きく、緑色の部分は左右のバランスもよく温度差が小さい事が分かります。

c図は温度差を(青色)バーグラフで示したもので幅が狭いところが温度低下がある事が分かります。

c図

このa b cがこの患者さんの温度測定に見るサブラクセイション・パターン
(いずれの図のI 2003/09/10 Pre Pat(パターン)、III 2003/10/25 Pre)
とアジャストメント後(II 2003/09/10 Post、IV 2003/10/25 Post)の変化です。

図a b cのIIIは、2003年10月25日の再来院時に測定したものです。
初回のサブラクセイション・パターン(図a b cの I )との若干の違いはありますが,グラフ、カラー分布、バーのいずれもI 図で示したサブラクセイション・パターンに戻っています。

そこで2回目のアジャストメント後の変化が図ab cの IV 図です。
サブラクセイションの度合いが改善されるに従って、さらに温度差が無くなり全体のバランスが整って来たのが分かります。

もし次回の来院でこのアジャストメント後と同じ測定結果が示された場合,サブラクセイション(アジャストメントの必要性)がない事が分かります。

この患者さんを医学的見地から解説しますと、上部頸椎にサブラクセイションが起こると頸椎4~6番の右側にかけて温度低下が現れ、腰椎2~4番の、特に左側に温度低下が見られるのが特徴です。

しかし、これはあくまでも上部頸椎の変位に対しての代償でしかありません。
ですから、上部頸椎の変位が取り除かれ、延髄にある血管運動中枢が正常になると自律神経の機能が整うに従って下部の血流も正常に戻って行きます。

この下部の温度変化は、やはり延髄に存在する背骨を支える筋肉へ命令を送る中枢からの神経伝達が良くなることによって筋力(抗重力筋)が回復し、背骨を支えている筋肉の緊張が取り除かれるため、背骨の歪みが脳によって本来の位置に整復され(変化し)てゆくのに並行して、神経の伝達妨害が取り除かれておこる背骨(椎骨)の上下関係における整合性による自然現象です。

これらのデータにみる温度変化は「背骨の歪みの原因」と「自然治癒の妨害の原因」が上部頸椎にあることを証明していると云えます。